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 大阪府議会令和7年(2025年)2月定例会における民主ネット大阪府議会議員団採決態度について

 

2025年3月24日

民主ネット大阪府議会議員団 

代 表 野々上 愛

幹事長 山田けんた

 

 

大阪府議会令和7年(2025年)2月定例会における

民主ネット大阪府議会議員団採決態度について

 

大阪府議会2月定例会では、来年度予算、条例改正、府議会の決議等の審議が行われた。それぞれの議案の採決に際しては、本来であれば本会議での討論を通じて会派の態度を明らかにするところであるが、全国的に見ても極めて異例の、少数会派に討論を認めない大阪府議会の運営により、当会派は発言機会がない。

加えて、今回、万博や基礎自治に関する決議案が提案可決されたが、これらを議論する特別委員会にも、少数会派は排除されており発言機会がない。

本来であれば本会議で行われるべき討論であるが、会派声明という形をとり公表するものである。

 

 

【反対】議案第1号 令和7年度(2025年)大阪府一般会計予算の件

 一般会計予算は、万博関連予算に142億円、私立高校の授業料支援に270億円を要する等、その他必要施策経費を圧迫している。

 私立高校へは、一定の合理的支援が必要であるが、公立高校の校舎の整備が不十分であることや、不登校等の課題に対して、各校に専任のスクールカウンセラーやソーシャルワーカーの配置が望まれる中、私立高校の授業料支援は現状過大であり、優先度が異なると言わざるをえない。加えて、私学の教育予算を制限するいわゆるキャップ制度へ参加しない学校に通う生徒には、一切支援がなされないという制度は、教育の質の向上をむしろ軽視する制度設計となっている問題を指摘したい。

また、国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金約218億円のうち約100億円が子ども食費事業に投じられるが、物価高に苦しむ府民は子育て世代に限らないことや、米不足により価格が高騰している中、米以外で貰える商品が割高である等、府民生活に寄り添っている事業とは言い難い。

また、府内では、路線バスの廃止や減便が相次ぐ等、公共交通の持続可能性が危機に面しており、その一因は、ガソリンの値上がりという、まさに物価高騰であるが、燃料費に対して支援が打ち切られたことも問題である。

  万博関連予算のうち、特に学校単位で子どもを招待する事業については、初夏に向けて気温が上昇する期間に、混雑する会場への団体参加となるため、安全面等の対策が万全であるとは到底言えない現状であり、事業自体に賛成ができないが、子どもたちの安全のため、会派としても細心の注意を向けていきたい。

 

 

【反対】議案第101号 大阪府立学校条例一部改正の件

府立高校の大正白稜高校(大阪市)と福泉高校(堺市)を廃校とする条例である。

先日、府立高校(全日制)の一般入試一次試験が行われ、半数を超える65校で定員割れとなった。このことは様々な影響を引き起こすが、特に大阪府で問題となるのが、府立学校条例に基づき3年連続して定員割れとなった学校が統廃合の検討対象となることである。卒業校を通じての地域や卒業生同士の関係は、「社会関係資本」として非常に重要であり、財源論から単純に、特に入試偏差値帯の低い学校を潰していくという安直な制度は認められない。

公立高校定員割れの背景には、私立高校への過大な授業料支援と強引な授業料無償化制度、公立高校の過少な建設投資、少人数学級や小規模校化をほとんど認めない学校配置計画と、統廃合に繋がる本条例自体の問題がある。

そもそも公立・私立を市場原理の下、競わせて、生徒が集まらない学校を淘汰するという仕組みを教育に持ち込むことは、教育の本質を全く見失っていると警鐘を鳴らしたい。

 

 

【反対】意見書第2号 地方議会議員の厚生年金加入に断固反対する意見書

【賛成】意見書第5号 若者の政治参加を促進する抜本的改革を求める意見書

冒頭に、この2つの意見書について、双方に賛成することは矛盾すると指摘するものである。

 多様な年代の声が政治に反映されるべきだという点には多くの賛同が集まるだろうが、終身雇用を前提とした現在の日本の制度下では、長期的なキャリアパスの中途に議員活動を挟むことは容易ではない。一般的な企業で雇用されながら、議員活動を行うことは多くの場合難しく、さらに8年、12年といった長期の離職後に復職することも困難が伴う。結果的に若くして議員を選ぶのは議員活動と並行して十分な収入を維持できる自営業か、医師や弁護士などの国家資格保有者が有利になる。また、地方議員の報酬は、地域や自治体規模によって差が大きいものの、さほど高くないことも多く、蓄財も難しい。

 こうした中、長期にわたって地方自治体議員を務めた後に老齢になった場合、年金も国民年金のみ、ということだと、一般の公務員や企業での被雇用者として定年を迎えた場合と、著しく経済状態が異なるということにもなりかねず、このキャリアパスの不透明さが若者を政治から遠ざける一因になっていることは疑いがない。政治家が「儲かる仕事」であるのも問題である一方で、貧困を引き受けてまで政治を語るべきと若者に求めるのも問題である。

 そういった中で、せめて年金ぐらいは厚生年金に加入するようにすれば、キャリアパスとしての不透明さを若干でも緩和できるのではないかと言うのが昨今の議論の前提になっている。

 一方で、では「政治家だけが明るいキャリアパスを保証されるべきだ」と言う考えにも問題はある。そもそも、国民年金は農家や家族経営の商店など、「農地や店などの生産材と住居は保有しており家業は子どもが継いでいる、といった条件で、衣食にかかる最低限の生活資金のみ保証すれば生活が成り立つと言うようなケースを前提とした制度である。専業主婦の場合は配偶者の厚生年金か共済年金がその生活をカバーする制度設計になっている。ところが、非正規化の波により、「厚生年金加入者である配偶者も、子孫に受け渡す生産財も、まして自分の家も」ない国民年金加入者が大量に発生することになった。雇用者を「正規・非正規」で分割し、かつては主婦などが前提であった非正規の枠に様々な就労形態を当てこむことは、ライフプランという面でその人たちに多大な犠牲を払うことでもあるということは、当初から指摘されていたが、そのまま見過ごされてきた問題である。

 この「幅広い非正規問題」を見逃して、地方議員という局所的で、それでも相対的には恵まれた「非正規」のみ救済すると言うことに妥当性があるか、ということは考える必要がある。現実的には、若者が人生の各段階で、非正規雇用も含めて様々な雇用形態を経験することになると言う前提の上に、老後の安心を保証できる制度設計が必要である。その問題を抜きにして「若者の政治参加を促進する」ことなどできない。一方、「地方議会議員の厚生年金加入に反対」することは「身を切る改革」などではなく、現状でたまたま条件に恵まれて地方議員になりやすい立場にいた現職議員が、より経済的に恵まれず、またそのことを持って社会に訴えたいことを持っているような若者を排除することに他ならない。

 

 

【反対】意見書第4号 訪日外国人による外国免許切替え手続きの厳格化を求める意見書

インターネット上などで短期滞在の外国人がビジネスホテルなどを住所にして日本の運転免許証を取得できることなどを問題視する意見が多く見られることに対応したものと思われる。

 しかし、実際に現在の外国免許切替え手続きがどのような問題を持っているのかという点について、議論が成熟しているとは言い難い。特定の民族や国籍といった属性に対するネット上でのヘイトスピーチが加速度的に増殖するという事態に留意する必要がある。

 短期滞在であってもビジネスや研究活動で免許を必要とする外国人は少なくないのであって、すでに認められた基準を安易に厳格化することについては、現在起こっている問題を把握し、またその対策として免許の制限が適切かどうかについて実証的に検討する必要があり、現状、立法事実に乏しい段階である。

 知識と技能の確認について適切に行われているかどうかについては、まず政府に経緯説明を求めるべきであり、拙速な結論をさけ、まずは様々な論点について議論してみることが重要である。

 

 

【反対】委員会提出第1号決議 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の成功に向けた決議

本決議は、「大阪府議会」が「大阪・関西万博の成功に向けて全力で取り組んでいく」ことを決議するものである。

 しかし、当会派はこれまでも、同万博の必要性や予算執行の適切性などについて、疑問を提起してきた。何をもってその成功とするのか。「その機運を大いに盛り上げ」るだけではなく、すでに建設途中の事故やメタンガス爆発が発生している万博会場において、事故なく安全に実施することは大前提であり、また既に数度の予算の上振れにより府民、国民負担が増大している。これ以上の負担増は認められないが、未だ明らかにされない赤字の際の責任体制をはっきりさせることも急務である。府議会の責務としてはより厳しくチェックを重ね、その適切性をチェックしていくことが求められる。

 したがって、大阪府議会が満場一致で「大阪・関西万博の成功に向けて全力で取り組んでいく」などという決議に賛成するとしたら、議会の価値の放棄であるとしか言いようがなく、当会派としては万博終了後まで含めて、予算や立地、成果報告等の個別の要素全てについてその当否について厳格に議論し、後世にその議論を記録することを目標としていく。現状で大阪・関西万博が「万人の目から見て一点の曇りなく大成功」と言える状態になることは非常に困難であると思われるが、それでも破局的な失敗ではなく、大きな事故もなく、また「それでも後世への教訓として得るものがなかったわけではない」という状況を作り出すためには、厳しい監視こそが議会の責務なのであり、安易に「成功に向けて全力」を出したりすることは百害あって一理なしである。

さらに、「いのちかがやく未来社会」という理念については、広く現代社会で受け入れられるものであろうが、個々人を細かくデータ化する手法がそれを実現する唯一の手段であるかについては、議論が分かれるところであろう。しかし、日本政府も大阪府も高等教育および基礎研究に対する支援という面で諸外国に列後している事が指摘される中、イノベーションのショーケースである万博に大々的にお金を投資することが適切であるかも疑問が残る。加えて、夢洲という立地が、万博の目的に沿って選ばれたのではなく、単にカジノ/IR誘致促進のための方便に使われたのではないかという疑念も提起してきたことも申し添える。

 

 

【反対】委員会提出第2号決議 「大阪府基礎自治機能の充実及び強化に関する条例」の府議会の責務に関する決議

 大阪府基礎自治機能の充実及び強化に関する条例では、基礎自治機能の強化のための市町村合併を前提としており、本決議では、府議会議員もその方向での議論を進め、シンポジウムやSNSで府の方針を「発信する」事が求められている。

 しかし、そもそも「自治」とは何か。市町村合併が問題解決に有効な手段であるというケースもあるだろうが、そうではないと住民が判断する権利も、また担保されるべきであり、府議会が基礎自治体の在り方について頭越しに論じるのは、自治という概念から最も遠いものであり、基礎自治体優先の補完性原則を原則とする地方自治法の趣旨にも反する。

 住民参加型の手法などは前世紀末から世界各地で議論されるようになっており、そうした手法を導入して地域住民に開かれた議論を促進するといったことは、都道府県自治体のあるべき姿といえようが、熟議する前から解決策を決めて押し付けるようなやり方は不適切である。

 また、そもそも「合併か否か」といった論点そのものが意見が分かれる問題であるとすれば、府議会議員もその様々な意見が反映されるように議論を深めていくべきであり、この問題について統一した回答があるかのような前提を議員に求めること自体が議会制民主主義に反すると言わざるを得ない。

 

 

 

 

 

以上

 

大阪府議会 民主ネット大阪府議会議員団

 
 
 

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