昨日、大阪府議会本会議で、議会を長期欠席する議員の報酬を停止する条例が可決されました。この問題、悩んで悩んで悩んで・・・賛成をしたのですが、経過と問題点を記しておきたいと思います。
*背景
今年選挙が行われた東京都議会で当選した議員が、選挙前からの度重なる無免許運転で、在宅起訴された東京都議会の議員が、その後議会を長期欠席したことを受けて、維新の会を中心に提案されたものです。
*経過
社会的な問題となった事象に対応するのは必要なことですが、今回はその経過が尋常ではありませんでした。
11月末、長期欠席議員の報酬カット条例を維新が提出との報道が流れる
12月3日(金)の議会運営協議会で条例案文が示される
12月7日(火)に本会議に提案、即日採決
なお、提案は維新・自民・公明の三会派共同で行われ、府議会本会議は少数会派は討論はおろか質問も出来ないので、全国に例を見ない厳しい条例が全く審議されず、条文提示から中三日で可決成立したのです。
*条例の内容
条例では、一つの定例会を全て欠席した時、その翌月から次の本会議に出席する前の月までの報酬を全額停止する、とされています。例えば2〜3月まで行われる定例会を全て欠席したら、次に開かれる5月議会までの間、4月分1ヶ月の報酬が全額カット。5〜6月に行われる定例会を全て欠席したら次の9月議会まで2ヶ月分の報酬がカットされると言う、休む定例会によって報酬カットの期間が変わるという、ちょっと不思議な作りになっています。
他府県でもすでに同様の条例がありますが、1年以上の長期欠席や、報酬カットは50%というものが多く、大阪の条例は非常に厳しい内容となっています。
例外として、出産、感染症、入院中で診断書が出てかつ議長が認める場合、の3つが定められています。が、これは大阪府議会の欠席規定よりかなり狭い範囲となっています。
*法律を上回る条例とならないのか
地方自治法203条に議員の報酬についての定めがあります。ここでは「報酬を支給しなくてはならない」となっているので、全額カットは違法である可能性が否定出来ません。
そもそも 地方自治体議員には報酬が支払われていますが、この「報酬」と言うのは給与ではなく、日割りとか月を区切っての停止とかが馴染むのかの議論が続いています。まずは地方議員の身分と報酬のあり方についての議論と整理が必要な状況なのです。総務省の地方制度調査会でもこの問題は議論されていますが、意見が分かれています。
*提案者の説明は
本会議で質問も出来ない、現在設置されている議会改革検討協議会にも付託されない、と意見すら言えない少数会派ですが、さすがに今回は提案会派の議員が説明に来られました。
その説明によると、「本会議が議員活動の根幹であるから、本会議を長期にわたり欠席することは議員活動をしていると見做さない」「違法であるかの訴訟リスクはどこまでいっても消えないのでそんなことは気にしていられない」「(主提案者である維新の会の)会派の中では様々な議論を交わした」と言ったようなことでした。たぶん。
確かに本会議は議員にとって根幹となる活動ですが、単に出席すればいいというものではありません。そこまで言うなら少数会派の発言を極端に制限している議会運営をなんとかしてもらいたいものです。前述の総務省地方制度調査会では、本会議への出席だけでなく調査研究や、自治体等の行事への出席、地域での意見聴取活動など、幅広い取り組みを議員活動と定義しています。
訴訟リスクはあるのかないのか、あるならどうすれば回避できるのか、その事を検証し議論する事がまさに議会の役割です。それが行われない中で議会出席だけが大事、と言う条例が通過していく皮肉な状況にあります。
そして何より、議会というオープンな場で議論されてこそ、問題点も有益な点も理解が深まるものです。
*最後に
確かに東京都議会議員の問題については、報道が加熱しすぎな面はありましたが、なんらかの対策は必要であるのは間違いありません。
だからといって、世論の求めるままに、法律を超える条例を作ってしまっていいのか、これこそ翼賛体制への一歩につながりかねないか、と最後の最後まで悩みました。
しかし議員提案による条例は、今後の運用状況も見ながら、また今まさに議論がなされている東京都議会はじめ、他地域の状況も見ながら、改善していく事も可能かもしれません。
本会議では代表質問も討論もできませんが、現在設置されている議会改革等検討協議会には少数会派もオブザーバー参加が認められていて、そこで引き続き様々な主張、提案をしていこうと思います。
最後に、採決後に会派として公表したプレスリリースと、本会議での採決に先立って議長に提出した緊急申し入れを掲載します。
2021年12月7日
民主ネット大阪府議会議員団
代 表 野々上 愛
幹事長 山田けんた
大阪府議会令和3年度(2021年度)9月定例会、12月7日採決分における
民主ネット大阪府議会議員団の態度と意見表明
本日提案、即日採決された、大阪府議会議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例の一部を改正する条例について、当会派は賛成の態度をとったが、審議方法、条例内容に課題が残るものである。本来であれば、本会議での討論により意見を表明すべきであるが、少数会派にその機会が設けられていないため、私たちの考え方について本書面により意見を表明する。
条例改正案の内容と問題点
今回の条例改正は、議会を長期間欠席する議員の報酬を減額するものである。改正案は、一つの議会を全て欠席した際に閉会月翌月から次に議会に出席する月の前月までの報酬を全額支給しないものである。東京都議会での例をはじめ、長期間の議会欠席中に報酬が支払われることが問題視されている中、報酬の減額を条例化することについては否定するものではない。しかし、そもそも地方議員は「議員報酬制」である。地方自治法203条で「職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる」となっており、その職務、職責とは議会・委員会への出席・審議や調査活動のみならず、自治体が主催・共催するイベントの参加はもとより、地域住民への説明・意見聴取等の活動も含まれると考えられる。条例の改正とその適用については、総務省の「地方制度調査会」での議論にもあるように、議員の職務・職責について明確化した上で、それに見合う「報酬」について整理される必要がある。また、報酬の全額支給停止は、法を上回る条例制定である可能性も否定できず、より丁寧な審議が必要であった。
審議経過における問題点
改正条例案文が示されたのが示されたのは12月3日の議会運営委員会理事会で、週末も挟み4日目の本日、本会議での一切の質疑もない中でのスピード採決である。9月定例会会期はまだ続くことから、本日、急いで採決しなければならない合理的理由は見当たらない。前述した法との関係をはじめ、慎重に判断をすべきであり、一切の審議を経ない条例可決は拙速であるとの誹りを免れない。
議員と議会出席とのあるべき姿について議論の端緒についたことは一定評価することから賛成票を投じたが、条例を運用していく中で、法との関係性の整理など、必要な改正議論も行うことを求める。
以上
2021年12月7日
大阪府議会議長 鈴木 憲 様
大阪府議会副議長 杉本 太平 様
民主ネット大阪府議会議員団
代 表 野々上 愛
幹事長 山田けんた
緊急要望書
今般、「長期欠席議員の減額」を条例化する提案がなされています。しかし、条例案文が提案されてからあまりにも短い期間での採決が予定されているとのこと、十分な審議時間を確保されるようお願いいたします。
そもそも地方議員は「議員報酬制」であり、地方自治法203条で「職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる」となっており、その職務:職責とは議会・委員会への出席・審議や調査活動のみならず、自治体が主催・共催するイベントの参加はもとより、地域住民への説明・意見聴取等の活動も含まれると考えられています。
民意を重く受け止め、対応を行うことは必要ではあると考えますが、条例の改正とその適用については、総務省の「地方制度調査会」での議論にもあるように、議員の職務・職責について明確化した上で、それに見合う「報酬」について整理される必要があると考えます。
今回の審議日程ではそれらの時間が十分に確保されているとは言えず、また特に議員の身分に大きく関わる問題であることから、議会改革検討協議会で議論されることや、少数会派にも十分に質疑や討論の機会を確保いただけますよう、特に要望をさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
以上
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