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執筆者の写真nonoueai

大阪はびきの医療センターによる新型コロナ対策のためのポビドンヨード研究についてのヒアリングメモ

8月4日に記者会見が行われ、大々的に報じられたポビドンヨード問題。

この問題について、担当課にヒアリングを行った結果と問題点をまとめた。


*ヒアリング概要

 この観察研究は、大阪府として5月末から相談を受け、6〜7月中旬にかけて大阪府の宿泊療養施設に滞在する陽性者41人分の検査を行い、7月末に研究結果を取りまとめたものとされる。しかし公表されているのが知事会見で示された4枚のフリップ(後日注意喚起のものが1枚追加)とセンター研究者から示されたA4のペーパー1枚のみである。(大阪府HP 大阪府立病院機構大阪はびきの医療センターによる新型コロナウイルス感染症患者(COVID-19)への研究協力について http://www.pref.osaka.lg.jp/kenisomu/povidon/index.html )

論文になっていない(プレプリントですらない)段階での研究発表で、担当課の説明も”中間報告的”と曖昧である。

大阪府としては府の宿泊療養者が観察研究の対象となり、研究協力の立場から知事が記者会見に同席したとされる。大阪市は、保健所管轄の観点から市長が記者会見に同席したとの説明だが、釈然としない。



*情報の公開という観点から

 今回、研究を行ったのは、地方独立行政法人大阪はびきの医療センター。旧府立病院が独法化したものである。大阪府としては出資法人として一定のかかわりを持つものであるが、情報公開という観点からはハードルがぐっとあがる。

研究発表を行った研究者が、また研究所がこれまでどのような研究を積み重ねてきたか、調べてみようと思ったところ、当該研究者がセンター長をつとめるという次世代創薬創生センターのHPは「準備中」との表示があるのみ。センター設置が最近であることは想像できたが、果たしていつ設置されたのか、議会図書館で確認した今年4月1日の組織機構図には、次世代創薬創生センターの記載はなかった。改めて府担当課を通じて、組織規程を提供いただいたところ、今年7/29の規約改正でセンターが位置付けられ、正式には8/1の設置と言うことが判明した。

一方、研究倫理委員会では、5月、7月と2度にわたり次世代創薬創生センター名で申請がなされている。センター準備中、等の表記があれば誤解がなかったのではと感じるが、条件付き認可の内容等、検証の必要があろう。

いずれにせよ独法化により、府民に対する情報公開のハードルが上がっていると言えよう。



*経産省問題

 記者会見には、病院長、研究を行った研究者の他に、大阪府知事、大阪市長が同席していた。

中でも大阪市長が、経産省には事前に相談した、と言う趣旨の発言をしている。

これが何を指すのか確認したところ、サプライチェーン関連の補助金について採択を目指す動きがあるようである。しかし担当課が具体的な動きをしているわけではなく、「政治的に」高度なレベルで市長が経産省と確認したのみという。

他方、厚労省には事前に報告したとされるが、記者会見翌日に行われた野党合同ヒアリングの中で厚労省担当課がなんら効果の検証は行われているものではない、と断言している。



*報道問題

 "イソジン報道"はセンセーショナルで、記者会見の生放送途中からドラッグストアからうがい液が消えたと言う。私も近所のドラッグストアで記者会見日以降、うがい薬の類は一つも見ていない。かつてのマスク騒動のような状況である。

在阪のテレビ局では、一局だけこの記者会見を生中継していた。会見が始ったのが14:20ころであるが、番組が始まった14時前にはすでに新型コロナ治療に「効果を期待できる薬発表」と言う文字が躍っていた。当該記者会見は、直前に行われたミナミの休業要請の記者会見に合わせて設定されたもので、記者会見の設定が報道提供されたのは、当日の10時以降とされる。また発表内容については記者会見まで伏せられていた、とは記者会見中に知事も言及している。情報管理は徹底していた、と言うが疑義が残る。



*現段階で、うがい液が、新型コロナ治療に効果があるとは考えられないし、松山氏もそう主張しているわけではない。にもかかわらず、そう誤解されるようなかたちで、知事によってうがいをおこなうことが推奨され、買占めが発生した。この経緯は、インサイダー疑惑まで含めて十分な検証が必要であろう。

 今回の事案で問われているのは大阪府が行政として、科学知識や研究をどう扱うかという問題である。

 第一に、過度にショーアップした記者会見は厳に慎むべきである。今回の記者会見のあり方は、研究の公表による影響への配慮には欠けていたと指摘せざるを得ない。

 第二に、特定の研究に行政が肩入れすることの問題である。もちろん、医学研究なしに新型コロナの問題を解決することはありえないのであり、研究には行政の支援が必要である。しかし、多くの研究は、少くとも初期段階では多くの不確定性を含むものであり、多様な研究者が多様な視点から様々な研究を行うなかから解決策がみつけられていくものである。したがって、「見込みがありそうな」研究を(素人である)知事が見分けることができると考えるべきではないし、それを論文にもならない段階から府民に推奨すべきでもない。

 第三に、府が取りうるあらゆる政策を提案していくことと、府民の代表たる府議会が今こそこういった課題を多角的に議論、検証していくことが重要である。それらの多くは、「魔法のような特効薬をみつける」ことではなく、多様な情報の整理、医療体制や府民の生活を支援するために適切な予算と人員をつけるという、地道で、残念ながらメディア受けはしない作業である。しかし、今ほど幅広い立場の府民の「困った」「辛い」を聞き取り、それを議会で議論し、具体的政策につなげることが求められている時期はない。吉村知事の仕事はメディアで夢の科学を語ることではない。

 来週から大阪府議会の臨時議会が始まる。しかしこの議会のテーマは「都構想」である。今行うべきは府民の新型コロナ対策を議論することである。加えて述べると、今臨時会では少数会派への質問時間の割り当てはない。私にも質問をさせろ!

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