2020年4月27日
民主ネット大阪府議会議員団
代 表 野々上 愛
幹事長 山田けんた
本日採決の諸議案について、新型コロナウイルス感染症流行拡大による影響が、未曾有の事態を引き起こしつつある事を鑑み、議会として、医療体制を守り、府民生活を守るため、緊急的補正予算を速やかに通し、必要なところに届ける事が第一である事から、賛成の立場をとった。ただ、それぞれの議案に課題や問題点は多くあり、本来であれば本会議の場で指摘、改善の要望を重ねるべきではあるが、大阪府議会の現状の運用では少数会派に本会議での発言の場がなく、こう言った形で発表せざるを得ないことは遺憾である。議会運営の改善も合わせて求める。
第1号議案 令和2年度大阪府一般会計補正予算(第4号)について
中小事業者等への緊急府支援を目的とした「休業要請支援金(府・市町村共同支援金)」では、今回の補正予算の約1割にあたる約402億円が計上されている。緊急事態宣言により、外出自粛が一段と強化され、経済活動が縮小する中で、特に体力のない中小事業者、個人事業主が厳しい状況に置かれている。特に府の自粛要請対象施設には、府の責任で支援をしていく事は重要であるが、同様の制度を実施する他府県の状況を見てもあまりに課題が多い。
一つは、事業の対象となる時期と、制度の公表時期の関係である。大阪府は4月14日に緊急事態宣言に伴う施設の自粛要請を行い、翌15日から知事が対象施設に何らかの補償を検討する旨、記者会見等で触れられるも、制度の実施とその概要を発表したのは22日である。しかし、本制度の対象となるには前日の21日までに休業が完了していなければならず問題である。この様な例は他に聞かない。事業の目的が自粛に協力した事業者への支援金であるとしても、感染拡大を阻止するためには、支援金により休業に踏み切る事が出来る事業者も後押しすべきである。また介護施設など、自粛要請の対象とはなっていない施設であっても、事実上府により感染防止の観点から利用を控える様呼びかけられている施設も、幅広く対象にすべきである。
二つは、基礎自治体との事前の協議のあり方である。大阪府の負担分は支援金の半額である。残りはそれぞれの基礎自治体の財源があてられる。そう言った制度設計であるにもかかわらず、知事の記者会見以前に協議がなされたのが大阪市だけである事は驚きである。市町村に半額を負担していただく「共同支援金」とするのであればより丁寧な協議が必要であったであろう。
今後、緊急事態宣言の延長も見込まれ、また新型コロナウイルスによる社会経済への影響は長期化する事は必至である。劇場型、分断と対立を煽る様な手法避け、広く府民生活を支える制度を模索されたい。支援金制度の今後制度の運用にあたっては、より必要な人に届けるために、他都道府県の動向も注視しつつ、対象事業者の見直しも必要である事を申し添えたい。また、すでに問い合わせ電話はパンク状態である。実施体制を確実にし、必要な事業者に対し、確実に、速やかに手続きが行われる事を求める。
第2号議案 大阪府新型コロナウイルス助け合い基金条例制定について
コロナ対策の医療従事者の支援のために寄付を募り基金を創設することは賛成である。しかし、「ふるさと納税制度」を活用した基金の募集は課題が大きい。 現在、国も、どの自治体も休業補償などのコロナ対策の施策のため財源に不安を抱えている。今回の基金で、例えば、兵庫県民が大阪府にふるさと納税をしたら、兵庫県の税収が減る事になる。現在、府では毎日のように知事がデレビ出演しアピールにいとまがない。結果、大阪府に寄付が相当集まることになる可能性がある。日本全国の自治体がコロナ対策で苦労している中で、税金の奪い合いを行うべきではない。
また基金の活用先についても、医療従事者だけで良いのか、広く活用すべきと考えるが、その方針は未定である。行政とは独立に、感染症の専門家医師らによる呼びかけのクラウドファンディングも開始されている。具体的資金の提供先やそのスキーム、時期などが明示されており極めて透明性が高いとうかがえる。こうした寄付先を紹介する事も知事が取りうる方策であろう。
いずれにせよ、医療従事者をはじめ新型コロナウイルス感染症の最前線で従事する人々へは、税金でしっかりとした施策を届ける事が府の責任である。
報告案件5号 令和2年度大阪府一般会計補正予算(第3号)の専決処分
報告1号、3〜5号の専決補正は合計214億円にものぼる大きなものである。しかし、以下の施策については、課題・問題が残るため、改善を強く要望する。
・デリバリーサービス活用による外出自粛促進
食事の配達に関するサイトを運営する事業者に対し、府内の店舗から府内の人への電子決済による出前注文で1,000円以上の注文に500円分のポイント等を付与するものである。外出自粛を支援するという目的には賛成するものの、次の2点において問題がある。
1 消費者の経済的負担が増加する
本予算は本来、消費者を経済的インセンティブにより誘導し、外食の替わりにデリバリーによる自宅での食事を促すことを目的としていると理解する。しかし、実際は消費者の経済的負担を増加させる施策となっており、当予算が単なる受託事業者のサービスPRに消えてしまっている感が否めない。例えば、デリバリーサービスでのある大手チェーン店の
牛丼(並)は570円(税込)である。1500円以上でなければ注文できないため、3つ頼むと570円×3(杯)=1710円となる。これに送料310円がかかるため合計税込2020円となる。一方店舗で購入する場合、牛丼(並)は380円(税込)であるため3杯1140円である。実店舗での購入に比べて、880円高くなる。500円ポイント還元したとしても、結果的に消費者の経済的負担は増加する。消費者はWebサービスでの商品価格と店舗での価格が異なることを想定しないため、誇大広告、詐欺的な施策とすら見えかねない。家計が苦しい時期だということにも配慮するべきである。
また、注文の手間、配送の待ち時間、注文のための最低金額、ポイント利用の条件(サービスの再利用等)等デリバリーサービスが必ずしも便利とは言えないことも申し添える。
2 小規模飲食店から客を奪う
小規模飲食店は来店者が激減している。その対策として、個々に宅配サービスやテイクアウトサービスを始めている。しかし、本支援策はそうした小規模飲食店を包摂しておらず、登録されている店舗は大手チェーン店等に偏りがある。つまり、小規模店舗から客を奪う方向に力が働き、小規模店舗の事業継続をいっそう困難にする。今回サービスの対象にならない小規模飲食店の事業継続支援も丁寧に行う必要がある。
・家庭学習の支援について
専決補正第3号にある「家庭学習の支援」では、府内幼稚園、小・中・高校に在籍する約100万人に図書カード2000円分を配布するものであるが、緊急的に行うべき感染拡大防止という最優先課題対し、以下の点で矛盾することを指摘する。
一つは、図書カード受け渡しによる感染リスクの増加である。当事業では、図書カードは府内学校に配布された後の、一人ひとりの生徒児童への配布方法は各学校に委ねられている状況である。児童生徒や保護者に登校をさせ配布する計画の自治体もある。府内では教職員の感染も報告されており、他県では4月の登校日での児童への感染も確認されている。学校現場が媒介となり感染拡大に繋がる可能性も排除できない事を留意して、府教育庁として安全対策を徹底するべきである。
もう一つは、書店等への外出による感染リスクの増加である。本事業ではオンラインで利用できる図書カードNEXTを配布する事としている。現状府内の書店は休業要請の対象外であるが感染拡大防止のため自主的に休業している事業者もある。しかし、図書カードが実店舗で利用可能ならば、そのように自主的に休業している事業者にとっては機会損失となり、自主休業書店についても開業へのインセンティブとなる。
そもそも古書店が休業要請の対象である一方、書店は対象外である事も矛盾している。本事業は外出自粛の徹底を要請する府の方針と矛盾しており、外出自粛方針にいっそうの混乱を生じさせる懸念がある。
長期化する学校休校で子ども達への学びの保障をはじめとした施策展開は急務である。基礎自治体では独自にオンライン授業の取り組みを始めるところも出てきている。本来、大阪府がすべきは、そうした地域の学習支援の取り組み支援や、大阪府全体での子どもの学びの保障のための施策展開である。図書カードの配布は、外出自粛要請と矛盾する政治的パフォーマンスであると指摘せざるをえない。
以上。
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