先週高槻市議会の3月定例会が終わりました。高槻の議会の模様は追ってお伝えしたいと思いますので今しばらくお待ち下さい。
さて、各地の自治体でも同様に3月定例議会が行われていますが、大きな話題となったのが、渋谷区が同性カップルに対して区がパートナシップ証明書を発行する条例案です。
正式名称「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」で、区が婚姻相当と認め一定の手続きを経た同性カップルに証明書を発行し、婚姻関係のある夫婦に準じた扱いをするよう区が“お墨付き”を与えるとの事です。
これにより同性カップルが家族向け公営住宅に入居できたり、入院した際は親族としての面会権が確保できるなど、同性カップルの日常生活が大きく変わる事が期待されています。議会での条例審議を前にすでに大きな話題となり、この動きに続く自治体が出てきそうな気配もあります。 今回の渋谷区での同性パートナーシップの条例提案と、時期を同じくして、夫婦別姓について最高裁大法廷での憲法判断が行われる事となり、日本でも国をあげて“家族”のあり方を考える起爆剤となりそうな動きに期待が高まります。
一連の動きの大きな原動力となっているのが東京オリンピックです。 ヨーロッパ等では、国の法律で同性婚を認めたり、結婚の条件から性別を除外したりする国が増えています。アメリカでも同性婚を認めている州もあります。 ソチオリンピックでは同性愛に不寛容な姿勢をとるロシア政府に大きな批判が集まりました。今や禁煙と並んで同性愛者の権利拡大はオリンピックを行う“先進国の標準装備“として求められる政策となっているのです。 たとえ“外圧”であっても、性の多様性を認める政策が進む事は喜ばしい事です。私自身も身近に“性的少数者”とされる友人が多くあり、12年前の高槻市議会での初めての質問は性的少数者に配慮した行政運営についてでした。時代が大きく進んで来た事に感慨ひとしおです。 これらの取り組みの根底に据えるべきなのがソーシャルインクルージョンと言う考え方です。日本語では、社会的包摂とでも訳すところでしょうか。あらゆる少数者に配慮した社会作りを目指す考え方として使われます。今回の渋谷に端を発した取り組みも、性的少数者に特化した取り組みで終わってしまうのではなく、あらゆる多様性を認め尊重し合う、ソーシャルインクルージョンを日本社会に広めていくきっかけとなればと思います。
さて、渋谷区に話を戻します。オリンピックを控えた東京の基礎自治体として同性パートナーシップ条例提案に踏み切ったのは英断と考えます。一方で気になるのが公園等からの野宿者排除の政策です。ターミナル駅近くの野宿者が多く集まる公園をスポーツメーカーに民間委託し、有料公園へと改変し野宿者を強制排除したことについて、先日その一部は違憲であるとの判決も出ました。 多様性を謳う区政が、都市の抱えるもう一方の、特性とどのように向き合っていくのかが問われています。 3月23日、渋谷区長は日本外国特派員協会で、同性パートナーシップ条例についての記者会見を行っています。野宿者の強制排除について問われた際に、野宿者の保護のために職員を巡回させるなどの対策を取っているとした上で「たとえば、年末年始ですけど、生活保護の申請が1件。その職員が回った中では、ゼロです。いないんです。こういうことについては、渋谷の区議会議員は路上生活者がいないということにしているんです」と述べて、野宿者の存在そのものを否定しました。また、現実に公園に集まる人々については「野宿者」ではなく「これは政治活動だと思ってます」とも述べています。
しかし、社会的な困難を抱えている人が行政に自分自身で名乗り出られない様々な事情があることは現場では常識です。また、人々が社会の問題を、グループをつくって訴えることがまさに「政治活動」なのであり、行政の長の仕事とは、まさにそういった「政治活動」の主張に耳を傾けることに他なりません。 同性パートナーシップ条例は大事な政策です。ぜひ渋谷区は先駆者として条例制定にこぎつけて欲しいと思います。一方で国際的に注目度の高い条例は推し進める他方で、野宿者などには排除を進める、というやり方は真の意味でのソーシャル・インクルージョン、あるいは多様性の尊重とは言えません。 性的指向の多様性、民族や文化の多様性、身体や精神的特徴の多様性、生活や経済力の多様性、ありとあらゆる多様性からくる声に謙虚に耳を傾け、真のソーシャル・インクルージョンを目指す地方政治でありたいと思います。
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